FP相談の記事にはよく「貯金ができない人は財形貯蓄から始めましょう」という言葉を見かけます。
そもそも財形貯蓄って何? お得なの? と疑問に思ったので調べてみました。
私の勤めている会社にも制度はありますが、利用している人が周りにはいません。
調べた結論、少しずつでも自力で貯められる人には不要な制度だと分かりました。
財形貯蓄は50年も昔に作られた、かなり古い制度です。
導入された当初は画期的な制度だったのかもしれません。
でも今は時代にそぐわない制度になってしまったように感じます。
ただし、今でも貯金ゼロの人が貯金するためには良い仕組みでしょう。
なぜおすすめしないのか、多くの人にとっては不要なのかを解説します。
財形貯蓄を選ばない理由
財形貯蓄はローリスクローリターンな制度です。
一番のメリットが「給料天引きで貯蓄されること」なので、
- 手元にある現金はいつの間にかなくなっている
- 毎月が自転車操業
そんな人には必要な制度かもしれません。
ただ、少しずつでも自力で貯金できる人には必要ない制度です。
わざわざ会社で天引きしてもらわなくても、自動で貯まる仕組みは作れます。
財形貯蓄は会社が給与の一部を代わりに銀行に預けて貯めてくれる制度。
代わりに自分で積立預金などを活用すれば済む話です。
令和の時代にあえて選ぶ必要がない?
制度が始まった昭和当時から令和へと時代は変わりました。
あえて財形貯蓄を選ぶメリットは薄れています。
特に金利が下がった影響は大きいです。
財形貯蓄のメリットに「利息が非課税になる」というものがありますが、100万円を0.01%の銀行預金に置いておいても、利息は年間100円。
税金は約2割なので、20円程度にしかなりません。
後述しますが、財形貯蓄にはデメリットも多くあります。
そのデメリットを抱えながら、20円のために貯蓄を続ける価値があるか?と考えてしまうのです。
財形貯蓄とは?
そもそも財形貯蓄とはどんな仕組みでしょうか?
「無意識のうちに勝手に貯金がたまっていきます!」なんてイメージですが、別に会社がお金をくれるわけではありません。
当たり前ですが貯蓄分がお給料から引かれ、しっかり手取りは減っています。
仕組みはいたってシンプル。
会社があなたの給与を2つに分け、一部をあなたの銀行に手取りとして振込、一部を貯蓄としてあなた名義の別銀行に積み立ててくれます。
厚生労働省のHPにはこう書かれています。
勤労者財産形成促進制度は、昭和 46 年に制定された勤労者財産形成促進法に基づき、勤労者が退職後の生活の安定住宅の取得、その他の財産形成の目的として貯蓄を行い、事業主及び国がそれを援助する制度です。財形貯蓄制度、財形持家融資制度、財形給付金・基金制度などの制度があります。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106564.html
財形貯蓄は「勤労者財産形成促進制度」という国の制度のひとつで、企業が福利厚生として取り入れるものです。
会社員は、自分が勤めている会社に制度があれば利用できます。
3種類の財形貯蓄
財形貯蓄には一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。
- 一般財形貯蓄 → 目的は自由。3年以上の積立が必要。
- 財形年金貯蓄 → 目的は老後資金。5年以上の積立が必要。引き出しは年金方式。
- 財形住宅貯蓄 → 目的は住宅資金。5年以上の積立が必要。
それぞれ似ているようで微妙に違っています。
一番の違いは、貯蓄の目的です。
一般財形貯蓄で貯めたお金は何に使ってもOKですが、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄はそれぞれ老後・住宅のためにしか使えません。
それ以外の目的に使うと、メリットである非課税がなくなってしまい、普通に課税されます。
財形貯蓄のメリット
厚生労働省のHPには、財形制度のメリットとして以下の5点が書かれています。
- 550万円までの財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄は、利子が非課税になる。
- 財形年金貯蓄は、年金の支払いが終わるまでずっと非課税。
- 給与から天引きされるので、銀行へ行く手間がはぶける。
- 給与からの天引きなので、知らずのうちに財産がたまっていく
- 財形持家融資(国の住宅ローンみたいなもの)を利用できる
さらに、企業によっては財形貯蓄をすると給付金があったりもするらしいです。
多くの人にとって必要ない制度だと繰り返してきましたが、福利厚生が手厚い会社にお勤めの方には、例外的にメリットが多いと思います。
是非利用してください。
利子が非課税
一番に財形貯蓄のメリットとして挙げられるのは、利子が非課税になることです。
「利子」にかかる税金は20.315%。
これは税金なので、どこの金融機関に預けても同じ利率です。
2割の税金がゼロになるなら、メリットしかないじゃないか!
そう思いますか?
でもこの非課税制度、現時点ではあまりメリットになりません。
なぜなら、利率が低いからです。
元々ほとんど利息がつかないところへ、いくら税金がかかっても雀の涙。
銀行に預けるだけで数%ずつ増えていった時代ならともかく、超低金利の2021年現在はメリットと呼べるほどではありません。
給与から天引き
財形貯蓄は給与から毎月天引きされるため、自分の手間が省けるというメリットがあります。
ただし、インターネット時代にわざわざメリットというほどのものか?と疑問でもあります。
ネット銀行ならもちろん、メガバンクでもスマホで操作できる現代。
久しくATMに行ってないという人も多いのではないでしょうか。
メリットはかなり限定的でしょう。
知らずのうちに貯まっていく仕組みも、前述したように自分で作れます。
財形持家融資が利用できる
財形持家転貸融資とは、財形貯蓄をしている人が利用できる公的住宅ローンのことです。
マイホームが欲しい人は、一考の余地があるかもしれません。
財形貯蓄の種類は3つのうちどれでもOKです。
財形年金貯蓄+財形持家融資という使い方もできます。
ただ、現在は一般の住宅ローン金利が低いので、財形持家融資とあまり差がないどころか時にはかえって高くつくこともあるようです。
ここでも低金利のせいでメリットがかなり薄まってしまいました。
幅広く情報を集め、より安い住宅ローンを利用するようにすると良いと思います。
財形貯蓄のデメリット
財形貯蓄のデメリットは以下のとおりです。
- メリットがない
- 手続きが面倒くさい
- 用途以外の目的で引き出すと課税対象
- 他の財形貯蓄に切り替えができない
3つある財形貯蓄のうち、一般財形貯蓄にはメリットがほとんどありません。
あえてこれを選ぶ理由がなく、メリットがないことがデメリットと言えるかもしれません。
また、手続きが面倒くさいことも大きなデメリットでしょう。
会社の経理部にいちいち書類を提出しなければ、自分のお金を引き出すこともできないのです。
さらに、非課税制度は「老後の年金」「住宅資金」として受け取らないと使えません。
途中で想定外のことが起こってお金を引き出すと、普通に課税されます。
最後のデメリットは、ほかの財形貯蓄に切り替えができないこと。
住宅を買うために資金を貯めてきたけど、やっぱり一生賃貸でいいわーとなっても、乗り換えができないんです(複数加入は可能)。
解約したときには課税されるので、やはり非課税の恩恵には与れません。
まとめ:財形貯蓄に代わる資産形成法
財形貯蓄が必要ない理由をいろいろ述べてみました。
50年前はきっと使うべき制度だったのだと思います。
現在はローリスクローリターンで、あまりメリットのない制度になってしまいました。
時代は変わりました。
超低金利の今、どうやって資産を増やしていけばいいのでしょうか。
安全第一なら、積立定期預金でOKです。
毎月給与が入金されたら預金口座に動かす仕組みを作れば、財形貯蓄と同じように自動で積立ができます。
口座は少しでも金利の高いネット銀行を選びましょう。
少しリスクを取れるなら、iDeCoやNISAで節税しながら資産形成しましょう。
iDeCoは拠出した金額の全額が寄付金控除され、税金が安くなります。NISAは投資で得た利益が非課税になります。
国の制度はひとつではありません。
民間の制度も含めれば、無限に選択しは広がります。
ひとつの方法を妄信せずに、今の自分に最適な資産形成をしていきたいですね。